2018年3月23日金曜日

街の再生投資の曲り角


 日本経済新聞の3月21日朝刊にて、「官民の市街地再生事業は本来、旧市街地密集地区の複合施設、店舗、広場へと刷新する筈だった・・・・。

 今、本来の目的が薄れてきている。これは、住宅の過剰供給源となり過ぎ」と指摘。

 1969年に市街地再開発法は制定され、主要な駅前の、密集した古い木造住宅や商店等の都市機能の向上再生をはかってきたところ、ここへきてあまりにも住宅偏重・タワマン頼みとなり、新たな都市問題の発症として、人口減時代にあった都市整備の手法を操る時期にきていると注告されています。

 

土地家屋調査士は、市街地再開発事業には、大きく関与しています。私自身も、ここ数年間、数件の大型プロジェクトに関与してきましたが、先般来より防災の観点で、旧市街地の狭あい道路解消を愛知県土地家屋調査士会の最重点テーマとして勉強した際、日本の国土交通省の社会資本整備交付金を、結局、狭あい道路のように、各筆の個人地権者の承諾、了解を拠り所とするような面倒な行政予算取りは、各地方の市町村吏員の方々にとって実績につながらないため(私見です)、区画整理事業のように、目立つ長期事業。又はこのような市街地再開発プロジェクトに傾注してしまっている現実を学びました。

 2月21日に当会定例研修会において、狭あい道路に係る講演パネルディスカッションを実施させてもらいましたが、岡崎市、春日井市の登壇いただいた吏員の方々にも、あらかじめこの件をうかがってみました。

 目立つ事業に優先的に行政投資が偏き、本当に大切な狭あい道路の解消には税金は使われていない・・・。同感されていました。

 日経は、本来の再開発事業が果たしてきた複合施設創造が陰をひそめ、正直、不要なタワマン的住宅を、税金投入補助金頼みにて大量供給させてしまっているといいます。

 かつての商業施設・出店意欲やオフィスの飽和による本来の再開発ビルは地方都市駅前には換算が期待できず、つくれば売れるであろうタワーマンションへと、それこそ衣替えしていっているのです。国の補助金が、住宅の大量供給を後押ししていきます。補助金はマンションの区分所有部分には出ません。既存建物の取り壊し費用や、公園など共用部工事費が対象です。

 ただ、補助金によって、結果としてはマンションの分譲価格は下げやすくなり、供給戸数を増やせば開発費用は回収しやすくなる。

 川崎市中原区。昨今有名な武蔵小杉駅前では、タワーマンションが続々と建っています。

 

日本は、人口減少時代に入りました。

住宅の大量供給は、いずれ行き詰まるとわかっていても、私共土地家屋調査士は宅地供給、新しい住宅、共同住宅の供給に関与しながら、生計をたてているのも事実。

 空家問題?私見ですが、空家バンクは逆行であり、昭和56年5月31日以前の旧耐震の住戸は全て解体すべきと、確信しています。防災上、古家を安く賃貸することにより、次の天災時に被害予定者を増やすだけ。何故わからないのでしょうか。

 そんな中、老朽RCマンションの出口戦略は、全くこの国では成功例をみていません。

 建替区分建物についても、これからの土地家屋調査士は、専門家として、進言していくだけの学習が必要です。

 これまで、登記をするだけで生計をたててきた歴史に、ひとつ、踏ん切りをつけるタイミングがきたと私は思っています。

 持続可能で魅力的な街創り。本当に必要な再開発と、既存密集市街地の防災上整備・・・

 土地家屋調査士からしてみれば、狭あい道路からの発信は、大きな使命であることは間違いありません。

狭あい道路解消に向けた、私達に出来ることは何だろうか?真剣な意見交換は必要です。 

6月7日、新年度の定例研修会にて、このテーマ、早速取り組みを始めます。第一弾の研修会として、準備に入ります。